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釧路地方裁判所 昭和42年(わ)201号

主文

被告人を懲役三年に処する。

この裁判の確定した日から五年間右刑の執行を猶予し、その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。

押収してある手製あいくち一丁(昭和四二年押第六八号の一)を没収する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、二〇歳未満の少年であるが、

第一、昭和四一年六月○○日午後九時三〇分ころ、北海道白糠郡○○町○町○区○野コンクリート裏小路において、同所を通行中の○藤○○子(当時三八年)を強姦しようと企て、いきなり背後から同女に抱きついてその口を手でふさぎ、その場に押し倒す等して強いて同女を姦淫しようとしたが、同女が大声を出す等して激しく抵抗したため、その目的を遂げず、

第二、(一) 同年七月○○日午後九時一〇分ころ、同郡同町○○○△△ベニア○○工場付近路上において、同所を通行中の○田○○子こと△田△△子(当時一六年)を強姦しようと企て、いきなり背後から同女に抱きつけ、両手で同女の首をしめつけたうえ、その場付近に押し倒し、無理矢理接吻する等して強いて同女を姦淫しようとしたが、同女が指にかみつく等の抵抗をしたため、その目的を遂げず

(二) 右日時場所において、被告人の右暴行により反抗を抑圧された右△田△△子から同女所有にかかる現金二五〇円在中の財布一個(時価約二八〇円相当)を奪取してこれを強取し

第三、同年一一月○日午後一一時三〇分ころ、同郡同町○町○区○藤方付近路上において、同所を通行中の○藤○代(当時四七年)を強姦しようと企て、いきなり同女の背後から同女に抱きつき、その口を手でふさぎ、さらに接吻しようとする等して強いて同女を姦淫しようとしたが、同女が手に咬みつく等して抵抗したため、その目的を遂げず、

第四、同年一二月○日午後一〇時一〇分ころ、同郡同町○町△区○角○靖方住居内に同人の妻○子を姦淫する目的で侵入し、

第五、昭和四二年一月○○日午後六時四五分ころ、同郡同町○○○△△製パン工場横路上において、同所を通行中の○山○子(当時二二年)を強姦しようと企て、いきなり背後から同女の口を押えつけたうえその場に同女を押し倒し、同女の顔面を殴打し頸部をしめつける等の暴行を加え強いて同女を姦淫しようとしたが、同女が大声で助けを求める等して激しく抵抗したため、その目的を遂げず、

第六、同年二月○日午後八時三〇分ころ、同郡同町○町○区○村方前空地において、同所を通行中の○村○子(当時二五年)を強姦しようと企て、いきなり背後から同女に抱きつき、同女の口を手で押えつけたうえ、「騒ぐと殺すぞ」などと言いながら同女をその場に突き倒し、その身体のうえに乗りかかり、ズボンの上から同女の股間に手を入れる等して強いて同女を姦淫しようとしたが、同女が大声で助けを求める等して抵抗したため、その目的を遂げず、

第七、(一) 同年同月○○日午後八時三五分ころ、右同所において、同所を通行中の○野○喜○子(当時三〇年)を強姦しようと企て、いきなり背後から同女の口を手で押えたうえ、その場に同女を突き倒し、同女の上に馬乗りになる等して強いて同女を姦淫しようとしたが、同女が大声で助けを求める等して抵抗したため、その目的を遂げず、

(二) 右日時場所において、右○野○喜○子がその場に落した同女所有の洗面道具等七点(時価合計約四八〇円相当)を窃取し、

第八、同年三月○日午後八時三〇分ころ、同郡同町○町○区○野コンクリート裏空地において、長女○○子(当時一年)を背負つて同所を通行中の野○み○り(当時二五年)を強姦しようと企て、いきなり背後から同女の口を手でふさいだうえ、その場に同女を横倒しにし、スカートをまくりあげ、パンティ内に右手を入れて陰部を弄ぶ等して強いて同女を姦淫しようとしたが、同女が大声で助けを求め付近の家人に発見されたため、その目的を遂げず、

第九、同年同月○○日午後七時四〇分ころ、同郡同町○○○、公営住宅○○○団地付近路上において、同所を通行中の○田○枝(当時二五年)を強姦しようと企て、いきなり背後から同女の肩を押え、同女の口をふさいだうえ、手拳で同女の顔面を数回殴打し、その場に同女を押し倒す等の暴行を加え、強いて同女を姦淫しようとしたが、同女が大声で助けを求め付近の家人に発見されたためその目的を遂げず、その際右暴行により同女に対し加療約二週間を要する顔面、耳介挫傷および皮下血腫の傷害を負わせ

第一〇、同年同月△△日午後九時三〇分ころ、同郡同町○○町○木○一方付近路上において、長男○博(当時八か月)を背負つて同所を通行中の○川○子(当時二三年)を強姦しようと企て、いきなり同女の背後から同女に抱きつき、付近の草むらに引き倒し「さわぐな、子供を殺すぞ」などといいながら同女の上に馬乗りとなり、その場にあつた荒縄を同女の首にかけて左手に持ち、同女のスカートの下から手を入れパンティの上から陰部のあたりを弄ぶ等した後、同女を立たせ、折から留守中の右○木方居宅内に同女を連行し、同居宅茶の間において同女に強いて接吻し、右○博をその場に降ろさせ、隙をみて戸外に逃れた同女を再び同室内に引き戻して、同室内のソファの上に押し倒し、無理失理接吻したり同女の乳房や陰部をもてあそぶ等したうえ強いて同女を姦淫しようとしたが、同女に「人が来る」と言われ、その気配を感じ逃走したため、その目的を遂げず、

第一一、同年八月○日午後一一時三〇分ころ、同郡同町○町二区○荘アパート前付近路上において、同所を通行中の○藤○代(当時四七年)を強姦しようと企て、いきなり同女の背後から同女の口を手でふさぎ「大きな声を出すな、これを持つているんだぞ」などといいながら、右手に刄渡り約一五センチメートルの手製あいくち(昭和四二年押第六八号の1)を持つて同女の顔前にちらつかせたうえ、同女を付近の草むらに押し倒し、その上に馬乗りとなつて右あいくちで同女のはいていたスラックス、シュミーズ、靴下等の右腿部分を切り裂き、陰部に手を触れる等して強いて同女を姦淫しようとしたが、同女が口唇にかみつく等して激しく抵抗したためその目的を遂げず、その際、右暴行により同女に対し、加療約一週間を要する右拇指切創、左肩部打撲傷等の傷害を負わせ

たものである。

(証拠の標目)(編省略)

なお、判示第七(二)につき、検察官は被告人の洗面道具等の盗取は判示第七(一)の暴行により反抗を抑圧された被害者からなされたものであるからその所為は強盗罪を構成するものとして公訴を提起しているが、判示第七に関する前掲各証拠によれば、被告人は被害者○野○喜○子を強姦しようとしたが、同女に大声をあげられたため、その目的を遂げ得ずに逃走しようとした際、たまたま同女が落した風呂敷包みを目にして持ち去つたものであることが認められ、同女の反抗抑圧状態を利用して盗取したものとは到底認め難いので強盗罪に該当せず、窃盗罪の刑責をもつて論ずべきものと考える。

(法令の適用)

被告人の判示第一、第二の(一)、第三、第五、第六、第七の(一)、第八および第一〇の各所為は刑法第一七九条、第一七七条前段に、判示第二の(二)の所為は同法第二三六条第一項に、判示第四の所為は同法第一三〇条前段、罰金等臨時措置法第三条第一項第一号に、判示第七の(二)の所為は刑法第二三五条に、判示第九および第一一の各所為は同法第一八一条(第一七九条、第一七七条前段)に、それぞれ該当するところ、判示第四、第九および第一一の各罪については所定刑中有期懲役刑を選択し、以上は同法第四五条前段の併合罪なので、同法第四七条本文、第一〇条により最も重い判示第二の(二)の罪の刑に同法第一四条の制限内で法定の加重をし、なお、本件は、自己の性的欲求を満足させるために一〇回もの多数に亘り、夜間一人帰宅途中の女性をつけねらい強姦せんとし、しかも最後の判示第一一の犯罪に至つては刃物を用いるという、はなはだ異常かつ悪質な態様であり、被害者らに与えた恐怖感、地域社会に与えた不安感は絶大なものであるが、一方幸いにも強姦の点はいずれも未遂に終つており、被害者らのうち大部分の者は現在被告人の前途を考えて宥恕の意思を表していること、被告人はまだ一七歳の少年であり、前科前歴もなく、犯行後自己の犯した罪の重大さを身をもつて認識し、今後は両親等の適切な指導監督が得られるならば、二度とこのような犯行に走ることはないであろうと期待されること等諸般の情状を考慮し同法第六六条 第七一条、第六八条第三号により酌量減軽をした刑期の範囲内で少年法第五二条第三項により被告人を懲役三年に処し、刑法第二五条第一項を適用してこの裁判の確定した日から五年間右の刑の執行を猶予し、なお同法第二五条の二第一項前段により被告人を右の猶予の期間中保護観察に付し、領置した手製あいくち一丁(昭和四二年押第六八号の1)は判示第一一の犯行の用に供した物で犯人以外の者に属しないから同法第一九条第一項第二号、第二項を適用してこれを没収し、訴訟費用については、形事訴訟法第一八一条第一項本文を適用して全部これを被告人に負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石川恭 裁判官 井上隆晴 裁判官 森本雄司)

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